グリティベンツ
Grittibänz
Bonhomme de Saint-Nicolas
12月6日「聖ニコラウスの日」にスイスで食べられている子どものためのパン
【聖ニコラウスの日】
12月6日は聖ニコラウスの日。
キリスト教がメインのスイスでは子供たちが楽しみにしている日です。子供たちは学校でみかん、落花生、ビスケットなどが入った袋詰めをもらえます。そして忘れてはならないのが、グリティベンツ。
この、足の曲がった人型のパンです。
子供の守護聖人である聖ニコラウスを象ったと言われています。
サンタクロースのモデルになった、あの人です。
聖ニコラウスの日に食べられる人型のパンは、地方によって呼び名が異なります。
スイスドイツ語圏では「グリティベンツ Grittibänz、Grittibenz」
その中でもバーゼルではGrättimaa、
チューリッヒやトゥールガウではElggermaa、
それからChläusとも呼ばれたり。
スイスフランス語圏ではシンプルに「聖ニコラの人 Bonhomme de Saint-Nicolas」と呼ばれています。
フランス、アルザス地方では「マナラ manala」や「マネル mannele」
ドイツでは「ヴェックマン Weckmann」
その形も、地方によって様々です。
スイス、ベルン旧市街
【グリティベンツの名前の由来】
Grittibenzの「Gritti」は、スイスドイツ語圏バーゼルの方言で「足の悪い(びっこをひくような)年寄り」を意味する、軽蔑的な含意のある言葉「Gritti」または「Grätti」から来ています。また、同じくスイスドイツ語圏のベルンで「干し草用フォーク(熊手)」「足が開いた状態」を意味する「Gritte」「Grittele」から来ているとも言われ、どちらにせよ、足は開いた状態なのがこのパンの特徴です。
一方、Grittibenzの「benz(bänzとも書く)」はBenedikt(ベネディクト)という男性の名前の愛称。当時Benediktが大変ポピュラーな名前であったことから、すなわち「男性一般」を示す言葉として使われています。日本でいうところの「〇〇太郎」のような使われ方です。
Gritti(足の悪い)+benz(男)
グリティベンツ Grittibenz にはこの2つの言葉が入っていて、無理やり日本語に訳せば、「足の悪い男」とか「がにまた太郎」というふうになります。
【どうしてグリティベンツを食べるの?】
聖ニコラウスは子供の守護聖人でありました。
グリティベンツは、その聖ニコラウスの日を祝うための子供向けのパンです。
スイスでは11月くらいからパン屋やスーパーに並びますし、
家庭で子供と一緒に手作りするのも一般的です。
娘が1歳の時に作ったグリティベンツ
14世紀のバーゼルでは12月6日に子供のパレードが行われていました。
聖ニコラウスが子供を守るため度々大人を叱責したことから、パレードの中から選ばれた1人の子供だけに、その日1日、大人を叱責する権限を与えたそうです。そうしてパレードの後には、白い小麦粉(今でいう、普通の小麦粉)を使ったパン・オ・レ(牛乳入りのパン)を食べることができたので、これが聖ニコラウスの日にパンを食べる習慣の始まりとも言われています。たしかに、スイスのグリティベンツには三つ編みパンの生地がよく使われており、卵、牛乳、発酵バターが入って子供も大好きなシンプルな味です。
【グリティフラウってなに?】
グリティベンツの「ベンツ benz」が「男」という意味を表すとお話しました。
この「ベンツ」のところを「女」を表す「フラウ Frau」に変えた「グリティフラウ」なるものが、グリティベンツから派生してスイスに存在しています。
グリティベンツの女性版、グリティフラウは「グレーテルのかまど」にもちょこっと登場しました。
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